急遽訪れた入院生活

症状が改善せず大きな病院に検査のため赴いた病院で、緊急入院、寝たきり状態となってしまった中年男が救われた話です。
突然訪れた入院生活ですが、入院当日担当の医師から説明を受け、手術の種類や回数を聞いていくうちに、不安と恐怖心、仕事や家族のことなど頭がいっぱいになり、入院の説明などは頭に入らない状態でした。
看護師さんも手際よく、こちらのストレスにならないようにとプライバシーには気を使っていただけましたし、こちらも笑顔で「ありがとう」と伝えるようにしていました。
色んなキャラクターの看護師さんの中でも
入れ替わり立ち代わり様子を診に来てくれる看護師さんも優しく笑顔で声を掛けてもらえるのですが、
色んなキャラクターの方がいます。
明るい感じで豪快な方、ベテランで後輩の面倒見のいい方、真面目そうな方、少し緊張気味で新人の方など。
一番惑わされてしまったのは自信満々の男性看護師さん。
豊富な経験の中から同じ病気の患者さんの入院期間や手術内容などを教えてもらえるのですが担当医の説明と違うこともあり、余計にナーバスになってしまいました。
その中でも一際気になっていたのが小柄な女性看護師さん。
芯が強そうで若いながらも落ち着きがあり、凛とした中にもふんわり包みこむような優しさがありました。
手術前日の入浴時の何気ない会話から
手術前日は体を清潔にしておくため、寝たきり状態で防水のストレッチャーに寝たまま、男女2人の看護師さんに手伝っていただきました。
今まで経験のないことですから身体を洗ってもらうことに、申し訳なさと少し恥ずかしい気持ちがありました。
雑談をしながら手際よく洗ってもらって久々の入浴にすっきりしました。
その時、外せなくなった指輪を看護師さんに外してもらってました。
数日後、趣味の話
1度目の手術も無事終え、後日、術後の検査に向かうのもベッドのまま移動です。
看護師 Yさんに優しく声を掛けてもらいながら各種検査を終え、病室に戻ると4人部屋は偶然にも私一人でした。
そんな時、ベッドのセッティングをしていただいたYさんから「ギター弾かれるんですよね?」と声を掛けていただきました。
手術前日の入浴の際に右肋骨付近の皮膚が赤くなってるのを指摘され、「ギターを弾くのが趣味でギターのボディーが当たるからかも」と答えたのを思い出しました。
「私も初心者なんですけど、弾いてます。」
Yさんもギターを弾いているそうで、こちらも嬉しくなり話が弾みました。
映画「はじまりのうた」でアダム・レヴィ―ン(マルーン5)や女優のキーラ・ナイトレイが歌っていた曲
エドシーラン、Ben E.KingのStand By Meなどの練習をしているらしく、
手元にあった音楽雑誌に掲載されていたレッド・ツェッペリンの名曲「天国への階段」などを紹介したり、塞ぎがちだった気持ちがかなり晴れていくのを感じ
苦手なバレーコードの克服や指のエクササイズなど話していくうちに親近感と安心感を覚えました。
しかしYさんは仕事中ですし、ナースコールも頻繁に鳴るのであまり長く引き留めるわけにはいきません。
手短に話すように心がけます。(実際はかなり迷惑を掛けていたかもしれませんが・・・)

今から思えば
昼と夜勤の看護師さんは毎日変わりますし、 Yさんに担当していただけるのは数日おきなのですが、手術前日の入浴をはじめ、手術室へ向かう時、術後病室まで送り迎え、各種検査などの移動時はこの方にお世話になりました。
たまたま、偶然なのでしょうが、この方にお世話になることが多かったように思います。
この方が印象的だったのは、他の看護師さんとは違い、いつも丁寧な言葉遣いとやさしい声掛け、それに「○○しておきましょうか?」「△△の用意をしておきますね」と、こちらがお願いする前に率先して行動する気遣いが嬉しかったのを覚えています。
そして必ず目を見て話しをしてもらえることも大きかったと思います。
コロナ禍で面会も禁止となっており、着替えなどの持ち込み、持ち帰りのみで家族とも殆ど会えません。
こんな状態ですから他の患者さんともほとんど会話することもなく、看護師さんが唯一の話し相手です。
寝たきりの為、外の様子も分からず精神的にもきつくなってました。
その後も担当の日には
病院という非日常的な空間で、感覚も麻痺しているのでしょう。
この看護師さんに担当してもらうのを楽しみにしていました。
自宅でギターの練習や指のエクササイズをしていたのでしょう。
会うたびに「~の曲に挑戦中!」「~の曲をマスターしましたよ!」と成果を教えてもらえるとこちらもギターが弾きたくてうずうずしてきたものです。
それを楽しそうに話している姿が印象的でした。
日々単調な生活の中で、新たに意欲が
ある意味隔離された状態で、仕事のことだけでなく外の景色すら殆ど分からない状態の毎日です。
しかしながらこの方との出会いによって、ギターへの情熱だけでなく仕事へのアイデアなどかなり積極的に考えることができるようになりました。
また新たに作成した企画書の採用が決まったと連絡も入り、意欲も湧いてきました。
長い入院生活の中で、何も予定がなく長い一日を過ごすこともあります。
あまり過去のことを考えたことはなかったのですが、今回改めて振り返ってみると、節目節目にその後の生き方を変える人に出会っているのです。
・バンド活動をしている時、ある人と出会い、海外の音楽事情をアドバイスと共に別の角度から音楽業界に触れることができたこと。
・就職した後も音楽に未練があった自分を鍛えてもらい、後に役員にまで育ててもらったある経営者。
・経営のノウハウを学び、結果、独立のきっかけとなった経営者。
・独立後、奔走している時に何かと気にかけ、ブレない生き方を厳しくも指導してもらえた恩人。
今回はこの看護師 Yさんがキーマンのような気がしてきます。
この方との会話の中でかなり心にゆとりが持てるようになりましたし、ものの考え方も色んな方面から物事が見えるようになったと思います。
まだ明かせませんが良いアイデアがあり、それを何とか形にしていく約束もあります。

自分からの精一杯のアプローチ
ポジティブな気持ちに変えてもらえた入院生活にも退院が見えはじめました。
当初の予定よりも早く退院の状況でしたので、嬉しい気持ちと寂しい気持ちとが入り混じっていました。
そこで何か区切りをつけるというか、最後お礼をしておきたいと思いました。
色々考えましたが、直接お礼を言うことにしました。
さすがに少し驚かせてしまいましたが、内容を静かに聞いて「嬉しいです」「ギターだけでなく仕事へのモチベーションも上がります」といっていただけました。
ただカッコ悪かったのは、退院が伸びてしまったため、その後も何度か顔を会わしたため恥ずかしい思いをしました。
その後も他の看護師さんと一緒の時は業務上の会話で、その後一人で話しに来てくれたりと、何かと気にかけてもらえた気がしました。

新たな生活から
実際、退院して実生活に戻り、コロナウイルス感染が急増したり看護師不足などのニュースを聞くと「どうしてるかな?」と思い出します。
忘れるよりも、Yさんとの約束を実現させること、自分も成長することを目標に ”糧” となっています。
完全に陽性転移となってしまいましたが、今では徐々に元の生活を送れるようになっています。
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