Kirk Hammettのギターを語ろうとすると、まず「恐怖映画」と「2億円のレスポール」の話から始まることになります。
ホラー映画マニアとして知られるKirkは、ムミー・ウィジャボード・白いゾンビ——それぞれ実際のポスターやグラフィックをモチーフにしたESPギターを複数所有しています。一方で2014年に約2億円で手に入れた1959年製Gibson Les Paul「Greeny」(Peter GreenとGary Mooreの元所有品)は、Metallicaの最も重要なアルバム「Hardwired… to Self Destruct」のレコーディングと、「Fade to Black」のライブで今も現役で使用されています。
90年代にライブハウスでMetallicaのリフをコピーしていた私が、Kirkに感じてきたのは「ワウペダルへの執着」です。あれほどメタルのサウンドとはかけ離れたエフェクトを、あれほど本質的なものとして使い続けているギタリストは他にいない。Kirkのワウは装飾ではなく、声です。
Kirk Hammettのギター——アルバムと機材の変遷
Kill ‘Em All(1983年)のGibson Flying VからHardwired(2016年)のGreenyまで、Kirkの機材選択はアルバムの音を直接反映しています。
| 時期・アルバム | メインギター | サウンドの特徴 |
|---|---|---|
| Kill ‘Em All(1983年) | Gibson Flying V・Jackson RR1T | ブライトで荒々しい。マホガニーの厚みとメタルブリッジのコンビ |
| Ride the Lightning / Master of Puppets(1984〜86年) | Fernandes(Floyd Rose改造)→ESP MM-270 | 「Super Strat」への移行。フロイドローズによるアーミングが初めて可能に |
| …And Justice for All / Black Album(1988〜91年) | ESP KH-2(初期カスタム) | EMG 81/60の標準搭載。ドライでタイトなJusticeサウンドの中核 |
| Load / Reload / St. Anger(1996〜2003年) | ESP KH-2各グラフィックモデル(Mummy・Ouija等) | ホラーグラフィック路線の確立。KH-2が代名詞に |
| Death Magnetic / Hardwired(2008〜2016年) | ESP KH-2メイン + Gibson Greeny(Hardwired) | Grenyはクリーンとブルースフィール。「Fade to Black」の艶 |
| 72 Seasons / M72ツアー(2023年〜) | ESP KH-2 Purple Sparkle(最新) | EMG KH Bone Breaker採用。フレット17〜24スキャロップ加工 |
ESP KH-2——40年続く最重要シグネチャーの全モデルを整理する
KirkとESPのパートナーシップは1987年頃に始まり、以来40年近く続いています。現行のKH-2ラインは日本のESPカスタムショップで職人が1本ずつ手作業で製作されており、モデルによって仕様が異なります。
| モデル | 主な仕様 | 特記・入手性 |
|---|---|---|
| KH-2 Purple Sparkle(最新・2024〜) | アルダーボディ・3ピースメイプルネックスルー・ローズウッド指板・フレット17〜24スキャロップ・EMG KH Bone Breaker・Floyd Rose Original | ESPカスタムショップ製。2026年現在の最新シグネチャー。パープルスパークルフィニッシュ |
| KH-2 Vintage(エイジド仕上げ) | EMG 60A(N)+81(B)・Floyd Rose Original・「CAUTION HOT」ステッカー再現 | 90年代のKirkの実機を忠実再現。ディストレス加工で「使い込まれた感」を表現 |
| KH-2 Ouija(ウィジャボード) | KH-2標準仕様。ウィジャボードグラフィック | Black Albumツアー期の代表機。コレクターズアイテム |
| KH-2 “The Mummy” | KH-2標準仕様。ホルス神の目インレイ・ミイラグラフィック | Loadツアー期(1996年〜)。Kirk自身が1993年に映画ポスターを購入し製作を依頼 |
| LTD KH-602(ミッドレンジ) | EMG Bonebreaker搭載。Floyd Rose 1000 | 入手しやすい価格帯。スカルアンドボーンズインレイ |
2億円のGreeny——なぜKirkはあのレスポールを必要としたのか
1959年製Gibson Les Paul「Greeny」はFleetwood Macのギタリスト・Peter Greenが使用し、その後Gary Mooreへ渡り、2014年にKirkが約2億円(報道によると200万ドル前後)で購入したギターです。
KirkはこのギターをHardwired… to Self Destruct(2016年)のレコーディングで使用しました。彼がGreenyを必要とした理由は明確で、EMGとESPのアクティブでタイトな世界では出せない「呼吸する音」が必要だったからです。
「Fade to Black」のライブでGreenyが鳴る瞬間——あの艶と深みは、いくらハイゲインアンプを積んでも作れない。機材の選択は音楽的な必然であるべきで、Kirkはそれを2億円で証明した。
Kirk Hammett 完全機材リスト【2026年最新】
アンプ
| 機材 | 時代・用途 | 特記 |
|---|---|---|
| Marshall(Kill ‘Em All / Ride the Lightning期) | 1980年代初期 | 当時の標準的なメタルリグ |
| Mesa Boogie Mark IIC+(マスター録音・ライブ) | Master of Puppets期〜現在 | MetallicaのMetallica(Black Album)の音の核。今もメインアンプとして使用 |
| Mesa Boogie Triaxis(ラック)+ Strategy 500 | 現代ツアーリグ | TC Electronic G-Majorエフェクトプロセッサーと組み合わせたラックシステム |
エフェクター・シグナルチェーン
| 機材 | 役割 | 特記 |
|---|---|---|
| Dunlop Cry Baby KH95 / KH95X(ワウ) | ソロの「声」 | Kirk最大の特徴。Michael SchenkerとJimi Hendrixに影響を受けて1980年代中盤から使用。ソロのほぼすべてにワウが入る |
| Dunlop KH Fuzz Face(ファズ) | ブースト・歪み | Kirk Hammettシグネチャーのゲルマニウムファズ。ソロのブーストに使用 |
| Digitech Whammy | ピッチシフト | オクターブアップ・ダイブボムの補助。「One」のイントロ等で使用 |
| TC Electronic G-Major | 空間系全般 | ディレイ・リバーブ・コーラスをラックで管理 |
| Ernie Ball ボリュームペダル | ボリュームコントロール | MIDI Solutions Pedal Controllerと連携 |
| MIDIコントローラー | リグ全体の切り替え | 複雑なラックシステムをライブ中にコントロール |
弦・ピック
| カテゴリ | 仕様 | 理由 |
|---|---|---|
| 弦ゲージ | .011〜.048 + .052(低E)カスタムミックス | 高弦のベンドとソロを.011で確保しつつ、低弦は.052でドロップチューニング時のテンションを維持 |
| ピック | Dunlop Kirk Hammett Jazz III(ブラック・1.38mm) | 小さいが厚いJazz IIIでアタックのコントロールと速弾きの精度を両立 |
Kirkのワウはなぜ「別格」なのか
メタルギタリストでワウペダルをここまで本質的に使う人間は他にいません。ほとんどのメタルプレイヤーにとってワウは「時々使う装飾」ですが、Kirkにとっては「ソロの呼吸」です。
Michael SchenkerとJimi Hendrixから影響を受けたと本人が語っているこのアプローチ——ワウを開けるタイミングと閉じるタイミングが、フレーズの感情そのものを決定する。Metallicaの密度の高いミックスの中でKirkのソロが「聴こえる」のは、ワウがその密度を切り裂く「声帯」として機能しているからです。
90年代に私がKirkのソロをコピーするとき、最初にワウペダルを踏まずに弾いて「なんか違う」と感じていた理由が、今はわかります。音符ではなく、感情のコントロールがあの音を作っていた。
元バンドマンが語る「Kirk Hammettから学んだこと」
Kirkはテクニカルな面でイングヴェイやペトルーシのような圧倒的な速さを持つわけではありません。でも「One」のソロ、「Fade to Black」のソロ、「Master of Puppets」のソロ——あれほど記憶に残るフレーズを書き続けたギタリストはそう多くない。
その理由はシンプルで、Kirkは「歌える」ギターを弾くからです。ワウで感情をつけ、ペンタトニックの中に時折クラシカルな動きを混ぜ、フレーズを歌として完結させる。技術より歌心——それがKirkから学べる最大のことだと、90年代の元バンドマンは思っています。
「また弾きたい」と思っているあなたへ。速く弾く必要はない。歌えるフレーズを1つ作れれば、それで十分です。
よくある質問(FAQ)
Q1. Kirk Hammettのメインギターは何ですか?
A. 現在のメインはESP KH-2 Purple Sparkle(ESPカスタムショップ製)です。フレット17〜24のスキャロップ加工とEMG KH Bone Breakerピックアップを搭載した最新シグネチャーで、M72ツアーで使用中です。
Q2. Kirk Hammettが持つGreenyはいくらで購入したのですか?
A. 2014年に約200万ドル(当時のレートで約2億円前後)で購入したと報道されています。Peter Green(Fleetwood Mac)とGary Mooreが使用した1959年製Gibson Les Paul Standardで、「Hardwired… to Self Destruct」のレコーディングと「Fade to Black」のライブで現在も使用しています。
Q3. Kirk HammettのワウペダルはどのモデルですかKirk?
A. Dunlop Kirk Hammett Cry Baby KH95およびKH95Xシグネチャーモデルが現在のメインです。1980年代中盤からワウをソロのほぼ全てに使用しており、Michael SchenkerとJimi Hendrixからの影響が出発点です。
Q4. ESP KH-2とLTD KH-602の違いは何ですか?
A. ESP KH-2は日本のESPカスタムショップで職人が1本ずつ手作業で製作するフラッグシップモデル。LTD KH-602は同じデザインコンセプトで価格を抑えたシリーズです。ネック構造(KH-2はネックスルー)・ピックアップ・フレット仕様などに差があります。
Q5. Kirk Hammettはなぜフレットをスキャロップ加工しているのですか?
A. フレット17〜24(高音域)のみスキャロップ加工することで、ソロでのチョーキングとビブラートを容易にしています。全フレットのスキャロップ(イングヴェイ方式)とは異なり、コードワークへの影響を最小限に抑えた実用的な設計です。









