18世紀から19世紀に現在のギターの形になったようですが、ヨーロッパではクラシック音楽を演奏する楽器として捉えていたものを、スチール弦の登場によりアメリカでより幅広いスタイルに変化させることに成功しました。
1900年代初めごろに登場したと言われるスチール弦ですが、それまでのガット弦(動物の腸から作られる)が主体となっていました。
ナイロン弦が普及し始めるのは第二次世界大戦後となり、クラシックギターのナイロン弦は意外と歴史が浅いのが分かります。
今回はアコースティックギターの中でもスチール弦のギターに焦点を絞って紹介したいと思います。
STEEL-STRING-GUITAR
恐らくマーチンやギブソンなどのアメリカのメーカーがブルース、カントリー&ウエスタンといった音楽を演奏するために、それまでのガット弦を超えるサウンド(ボリューム)とサステインが得られるうえ、後に登場するエレクトリック化によるピックアップの発明などスチール弦の登場により、弦楽器はより幅を広げることとなります。
C.F.MARTIN
スチール弦を使用するフラットトップのアコースティックギターの最高峰に位置しているのがマーチンです。
創始者であるドイツ生まれのクリスチャン・フレデリック・マーチンがウィーンでギター製作を学び、1833年にアメリカへ渡り、ニューヨークでスタートさせたブランドです。
マーチンギターのヘッドには”EST.1833”と入っています。
ただ当初のギターは現在の形とは違ってヘッドのペグの配列も右側に並べられた「シュタウファーモデル」というものでした。
1850年代にはボディートップの裏側に強度と音響特性に優れた「Xブレイシング」を完成させ、現在ではアコースティックギターメーカーのほとんどが採用している製法です。
1930年頃に導入された、それまでのクラシックギターからの常識であった12フレットでのボディジョイントを14フレットにすることでプレイヤーから大きな支持を得ます。1934年には現在のマーチン人気を不動のものにしたシリーズ、「ドレッドノート・モデル」が登場します。豊かな低音とボリュームはD-18、D-28、D-41、D-45という型番はドレッドノート(ボディシェイプ)-グレードを表記しており、D-45が最高級モデルです。
このラインナップは現在でも生産が続けられる代表的なモデルですが、ヴィンテージモデルには驚くほどの価値があり、その人気の高さをうかがい知ることが出来ます。
もう一つ、マーチンギターの「サイズ」というものがあり、0(オー)が付いていると思いますが、
サイズ0(オー)=Concert size
サイズ00(ダブルオー)=Grand concert size
サイズ000(トリプルオー)=Auditorium size
というようにボディのサイズ=音の大きさに違いがあります。
GIBSON
マーチンと人気を二分すると言ってもいい、1902年にオーヴィル・H・ギブソンがアコースティックギターメーカーとして創業したギブソンを紹介します。
ギブソンのフラット・トップギターの代表といえばJ-200が有名です。
1937年に発表され、1950年中ごろまではSJ-200(スーパージャンボ)と呼ばれ、マーチンに対抗するモデルで、当時人気のあったレイ・ウィットリーのモデルとしてプロトタイプが作られたのが始まりということです。
ドレッドノートよりさらに大きなサイズのボディ、サンバーストカラー、花をモチーフにした大き目なピックガード、透かし彫りのブリッジなど豪華な見た目と「味わいのある渋さ」が人気のモデルとなっています。
その他にもドレッドノートに近いスタイルの「ハミングバード」、「ダブ」も人気モデルです。
GUILD、その他のメーカー
マーチン、ギブソンを紹介しましたが、両社に引けを取らないギルドも忘れてはならないメーカーです。
アメリカのニューヨークで1952年に創業され、エレキギターも発売しているメーカーです。
様々なバリエーションがある中でも人気が高いのはF-50Rというモデルで、現在ではJF-55というモデル名に変更しています。
愛用者としてはサイモン&ガーファンクル時代のポール・サイモンが有名です。
以上の3社が代表的な人気メーカーとなっています。
他のメーカーとしてはアメリカの「テイラー」、カナダの「ラリヴィー」、アイルランドの「ローデン」の他、究極のハンドメイドギターといわれる「ドン・マッサー」、「ロイ・ノーブル」などのように世界中に独自の特徴を持ったメーカーが多く、フラットトップ・ギターの世界はとても広くなっています。
ARCH-TOP GUITAR
アーチド・トップのアコースティックギターは(ピック・ギター)とも呼ばれ、ジャズギターとしてビッグバンドの中で、またはピアノ、ホーンの音にかき消されない音を実現するためにピックアップが取り付けられ、後にエレキギターの基になっていくことは意外にも知られていません。
このジャズギターの特徴としては、フルアコースティック・ボディに両サイドに「fホール」が開けられ、固定されない木製ブリッジ、トラピーズタイプのテイルピースといったところでしょうか?
このジャンルの中で代表的なギターといえば、「ダンジェリコ」が有名です。
ジョン・ダンジェリコは1932年に自身の工房を作り、1964年に他界するまでの間に製作された1164本のギターは卓越した仕上がりで美術品のような仕上がりと風格のあるサウンドは高い人気があり、ダンジェリコの意思を受け継ぐ「ダキスト」からハンドメイドでクオリティーの高いギターが生産されてます。
一方でギブソンにもジャズギターの人気モデルが多く、1923年に発表された「L-5」や最高級モデルの「Super400」があります。
またこの「Super400」のヘッドは後のレスポールカスタムにも採用される「スプリット・ダイアモンド・インレイ」が使われています。
またオーダーで製作された「カラマズー・アワード」といったモデルにはSuper400より凝った造りでヴィンテージ価値が高く、手の届きにくいモデルがあります。
RESONATOR GUITAR
ブリッジ下に特徴的なリゾネーター(共鳴装置)が取り付けられ、独特な響きと大きなサウンドが得られる「ドブロ・ギター」が有名です。
1920年代にナショナル社の中心人物であったジョン・ドペラが発明し、4人の兄弟と共に自分の会社「ドブロ」を作ったことから始まり、リゾネーター・ギターを発表します。
後にナショナル社と合併しますが「ドブロ」ブランドは残り、ウッドボディ・ラインに円形のサウンドホールはドブロ、スティールボディ・ラインでfサウンドホールはナショナルといった分け方をされています。
ドブロ・ギターには寝かせて、スライド・プレイ専用といったモデルも存在します。
スティールボデーモデルはかなり重いのが難点ですが、独特な響きで人気の高いモデルでもあります。またリゾネーター部分は複雑な構造になっているため分解してしまうともとに戻せなくなる場合があり、注意が必要です。
ELECTRO-ACOUSTIC GUITAR
フラットトップのアコースティックギターに初めてピックアップが取り付けられたのは1951年発表のギブソン「CF-100E」ですが、有名なモデルとしては1954年に発売された「J-160E」はビートルズにも使用され人気となりました。
現在のブリッジ部分に「ピエゾ・ピックアップ」が搭載された方式とは違いシングルコイルのピックアップがボディに直接ネジ止めされていました。
当時は後付けのピックアップは多く出回っていましたが、初めから組み込まれたモデルは少なかったようです。
これはフィードバックが起こりやすく、使い勝手が悪いのが原因でサウンド自体も満足の行くものではなかったのです。
そこで登場したのが「コンタクト・ピックアップ」でボディに貼り付けて振動を拾うコンパクトなタイプで音質もかなり良くなりました。
ピエゾ・ピックアップが登場するまでは圧倒的な支持を得ていました。
また1960年代後期に登場したオベーションはアコースティックギター界に衝撃を与えました。
ヘリコプターのローター用に開発されたファイバー樹脂「リラコード」を使ったラウンドバックだけでなく、ブリッジサドルにセットされた各弦独立のピックアップでダイレクトに弦振動を拾い、ハムノイズのないクリアーなサウンドが出力できます。
もちろん保守的な思想のギタリストからは敬遠されていたようですが、ロックミュージシャンにとってはフィードバックの心配がなくボリュームが上げられ、サウンドも良い。しかもファイバー樹脂のボディは丈夫で湿気などの影響が少ないと革命的だったと言っても過言ではありません。
またこのピエゾ・ピックアップの登場によって新たな取り組みとして登場したのが「エレクトリック・ガット」です。最初に登場したのはオベーションから発売されましたが、後にギブソンから発売された「チェット・アトキンス・モデルCE」これはホロウボディではなくソリッドボディですがガットギターをエレキギターに限りなく近づけたモデルといえます。そのため持ち替えたときの違和感が少ないのが特徴です。またガットギターにエフェクトを掛けるなどスタジオならではのサウンドメイクがライブでも可能となるなど表現の場が広がっているのも、愛用者が多い理由です。
また12弦タイプでも各弦が(特に副弦側)バランス良く出力されるので、一味違うサウンドが体感できます。