弦の選び方
ギタリストにとって弾き心地はネックグリップやボディ、ネックの振動、サウンドと共に大変重要なポイントです。
また、シールド、エフェクター、アンプなどサウンドキャラクターやノイズの問題など優先してしまい、後回しになりがちな「弦」を紹介します。
ついつい「消耗品だから」と、安いセットの「弦」を買っていませんか?
指の触れる一番デリケートな部分です。長寿命の製品もありますし、憧れのミュージシャンと同じ、またはシグネチャーモデルであれば気分も上がります。
演奏後のメンテナンスをしっかりやってやれば弾き心地も長く保てるでしょう。
まずは構造から
アコースティックギターの弦にはナイロン弦や巻弦の芯部分にシルク素材が使われている物もありますが、エレキギターの弦には一般的にピアノ線と呼ばれる物が使われています。
この金属弦が振動しピックアップの磁界を乱す事によって電気信号が作られます。
主にステンレス・スティールやニッケル・スティールに分けられ、鉄に含まれる他の成分により硬さ、触感が変わってきます。
一般的なエレキギターの弦セットは1、2、3弦は単芯のプレーン弦と4、5、6弦に使われている巻弦のワウンド弦に分かれ、ワウンド弦にも外側に巻かれている形状により、
丸型を巻いたラウンド・ワウンド、板状の素材を巻いたフラット・ワウンド、その中間的なハーフ・ワウンドなどがあります。
また、ワウンド弦の芯線に六角状のピアノ線を使用したタイプやサステイン、音量対策とした磁気処理をしている物もあります。
加えて、劣化防止のためのコーティングなど各メーカーによる差別化が行われています。
これにより、フィンガリングでの触感、テンションの硬さ、耐久性、ピックアップやアンプとの相性など影響は多岐にわたっています。
ゲージとは
ゲージとは
弦の太さをゲージと言い、インチサイズで表示されています。
簡単にセット弦では、ライト・ゲージやエクストラ・ライト・ゲージ、ヘヴィ・ゲージなど呼び方も細分化しています。
また、呼び方もメーカーにより異なります。
一般的な0.09〜0.42、0.10〜0.46を中心に更に細い0.08〜0.38などのセットや0.085〜0.46など憧れのギタリストが使用しているゲージや好みによって替えてみると新たな発見があるかも知れません。
また見落としがちなのは、ギターのスケール違いによるテンションの違いもあります。
例えばストラトのようなロングスケール約648mmの場合とレスポールなどのようにミディアムスケール約628mmを持ち替えると、同じ太さのゲージでもテンションが変わってしまいます。
テンション(張りの強さ)調整ができるものは調整しておきましょう。
有名なのは、BLACK SABBATHのギタリスト、トニー・アイオミは押弦する右手(左利きのため)中指と薬指の指先を、不慮の事故により失っているため少ない力でも押さえられるようにテンションは緩くなっています。
そこで得られるダークでヘヴィなサウンドがトレードマークにもなっています。
太い弦に替えると音も太くなる?
こんなセリフを聞いた事があると思いますが、エレキギターの場合、実際は大きく変化しません。
太い弦のセットを張ればテンションが上がりますし、押弦する指の力加減、ピッキングの力加減も変わります。
それに負けじと指に入れる力も強くなり、結果太い音になるかもしれません。
そのためピッキングがテンションの強さに負けて弾き辛いと感じたり、ミスが増えたり、コシのない音になってしまう事もあります。
これを逆手にとって、練習する時は太い弦で練習している場合もありました。
しかし、通常よりも太い弦を張ってしまうと、ナット部やブリッジの不具合のもとになる場合があるため、頻繁にゲージサイズを変更するのはお勧めできません。
例えば0.09から0.10に替えて音を太くするよりもシールド、エフェクター、アンプなどの設定や工夫の方が効果は大きく、ゲージの太さの影響は微々たるものです。
弦の交換時期
交換時期に関しては、どこかの弦が切れた時という人が多いのではないでしょうか?
これも「個人の好み」ということになります。
確かに好みの違いによりますが、新しい弦は高音域に張りがあり、アタック感も感じられる反面チューニングの安定まで時間がかかります。
この安定までの時間を短くする仕様のセットも発売されています。
また逆にアタック感の落ちた、馴染んできたトーンが好みの人もいます。
有名なギタリストでギターテクが数ヶ月使った古くなったギター弦をわざわざ自分のギターに張っているというのを聞いた事があります。
これはちょっとレアなケースだと思いますが。
弦の劣化は現在ではコーティング処理などにより長持ちするゲージも出てきており、複数のギターを所有している人からすれば長持ちはありがたいのですが、これも個人差があるようです
汗などで錆びたり、滑りが悪くなり黒ずんできた、トーンの艶が無くなる、チューニングが安定しなくなってきた、など自分で判断すれば良いと思いますが、錆びた弦はフレットやブリッジを痛めてしまいますのでその辺りも含めて判断しましょう。
演奏後に汗などはクロスで拭き取っておくと若干長持ちします。
また、長期間弾いてなかったギターの弦がさびているようなら迷わず変えた方が良いでしょう。
また一本弦が切れた場合、1本だけ替えてもいいのですが、トーンが変わってしまうため他の弦が古い場合はセットで変えた方がいいでしょう。
ギター弦、厳選14種類
ERNIE BALL/SUPER SLINKY
プレーン弦は硬度の高いスズ・メッキによるハオカーボン・スティール、ワウンド弦の芯線にはヘックス(六角状)スティール・コアを採用、ニッケル・メッキ・スティールを巻いている。
クセのない明るくライトな響きで、ピッキングに対して芯のあるハッキリとした鳴りが特徴。
バランスの良いトーンと、サステインなど安定感のある弾き心地。ワウンド弦はややフラットでザラツキ感を抑えた指触りはスムーズ。
全体的にテンションが弱いので、チョーキング、ヴィブラートなどは楽に感じます。
DADDARIO /PRO STEELS EPS520
磁力特性に優れている特別な合金、プロ・スティールを採用。
ダダリオのエレキギター用の中では最もロングライフシリーズ。
とても明るいサウンドでバランスの取れたナチュラルな響きが心地良い。
テンションが弱いのでチョーキング、ヴィブラートは掛けやすいがピッチがよく、チューニングも安定する。
DADDARIO/NICKEL WOUND EXL120
スタンダードセットから7弦用、ジャズタイプ、ナッシュビル・チューニング用など多彩なラインナップが用意されている定番シリーズ。
オールラウンドに対応した明るくクセのないサウンドで、ニッケルによるライトで響きの良い低域ワウンド弦からアタック感のあるプレーン弦の高域まで明るいサウンドでまとまっている。
テンションが柔らかくチョーキングしやすいプレーン弦と、ニッケル特有の安定したフィット感を持っている、ざらつきを抑えたなめらかな指触りのワウンド弦はドライブ、クリーン共に音作りし易い、バランスの取れたトーンが特徴。
GHS /BOOMERS GBXL
ザ・パワー・ストリングスとあるように豊かな音量などパワフルなイメージを持っている。
ニッケル・プレート・スティールによるダイナマイト・アロイ・ラウンド・ワウンド・セット。
生音の音量も豊かで、アンプ側クリーンセッティングではクリアな響きを持ちながらパワー感のあるサウンドが出てくる。
ワウンド弦の豊かな広がりがあり、まとまりのある腰のしっかりとした鳴りはこの弦の大きな特徴。
プレーン弦はしっかりとしたテンションを持っており、ハイポジションでは若干チョーキングは重く感じるが、ファットで芯に重さのあるトーンは特徴的。
SIT/POWER WOUND S942
独自のボール・エンド、ツイスト・ロック加工により、安定したチューニング、ステイ・チューンで知られる弦で、
ボール・エンドに起こるねじり部分での滑りを防ぐことによってチューニングを安定させる加工で、チョーキングやヴィブラートを多用しても安定したピッチをキープするよう考案。
芯線にはニッケル・プレートされたハイカーボン・スティールを採用。
パワー感豊かでサステインの効いたサウンド。
ボリュームも十分にあり、ワウンド弦は適度な張りを持つがプレーン弦は柔らかくチョーキングも軽い。
ボトム側にテンションがあるため豊かなパワーを持ちながら腰のしっかりしたサウンドとピッチの安定感を持っている。
DUNLOP/LIGHT
エフェクターブランドとして知られるジムダンロップからのエレキギター弦。
ピュア・ニッケル・スティールによるファットでパワフルなサウンドが特徴で、ピッキングレスポンスの良さやトーン・バランスの良さをポイントに造られ、生音でも非常にパワー感があり、低域中域にまとまりがある。
しっかりとしたテンション感があるがハイポジションでは柔らかいため、チョーキングなどを絡めたソロの弾きやすさがある。
FENDER/SUPER BULLETS 3250L
ストラトやテレキャスターのブリッジ、ストリングストッパーにフィットするようにデザインされたオリジナル・エンド、ブレット・エンドを持つニッケル・プレート・スティール弦。
響きの良さ、サステインの良さを向上し、フェンダーらしい明るくキレの良いトーンを基本にアタックとバランスの良い高〜中域を持ち、ワウンド弦はニッケル特有の滑り過ぎない適度なザラツキ感がある。
テンションもやや強めで、その分ピッチの安定感は良くポジションに関係なくメリハリの効いたトーンがある。
チョーキングは若干重めではあるがサステインは良くコントロールし易い。
シングルコイルピックアップに適したトーン。
ELIXIR/NANOWEB
独自のコーティングテクノロジーによってプレーン弦にはアンチ・ラスト/サビ防止を施すことによって弦本来のトーンを維持させたまま演奏での汗などによるサビや腐食を抑えた長い寿命を与えた画期的な弦。
ワウンド弦では超極薄ナノウェブコーティングを施すことによって音質の長持ちとコーティングによって不必要なグリッサンドノイズ等を抑えたノイズレスなフレージングを作り出すことができる。
タイトでクリア感のある低域と落ち着いたバランスの良いトーン、ノイズを抑えたサウンドはレコーディングにも最適。
LA BELLA/THE BENDER
古くからクラシック弦などを始めとするストリングメーカー。
ピュア・ニッケル・スティールにラベラー社独自のコーティングを施したラウンド・ワウンド・セット。
オイルコーティングのような独特のフィット感がある生音も含め粒立ちのはっきりとした重めのトーンを持つサウンド。
弦のテンションは強い方でチョーキングは重めに感じるが、独特のフィット感としっかりとしたテンションが1音1音の粒質の良いパワー感豊かなサウンド。
DEAN MARKLEY/SIGNATURE SERIES 2502 LT-09-42
外箱は製造後に使用するまでの湿度や温度などの外的影響を受けにくいシールド・パッケージを採用し長寿命への配慮がされている。
ニッケル・スティールによるフィンガリングの安定感の良さ。
ワウンド弦のしっかりとした張りを持つテンション感は豊かな音量などファットでパワー感のあるトーンキャラクター。
ブライト系ではないが低音が豊かで重めのトーンピッキングのアタックもしっかりと出てくるサウンドでバランスは良い。
プレーン弦などテンションは全体的に強めでチョーキングなどもしっかりとしたグリップを要求するハムバッキング・タイプのピックアップとのタイトな中域などドライブ・サウンドにも向いている
SADOWSKY/SGN9 BLUE
ブルーのパッケージはワウンド弦にニッケル・メッキ・スティールを採用。
ニッケル特有の安定したフィンガリング感でレスポンスの良いサウンドによってオールラウンドなサウンドスタイルに対応したトーンを持っている。
コードなど安定したフォームをキープし易い。
柔らかい1、2弦のチョーキングは楽に音程をコントロールでき、適度なテンションを持つワウンド弦とのバランスが良い。
粒立ちの良い明るいサウンドを基本にしながら中域に芯があり適度な重さとまとまりの良いトーンは自然な弾き心地があり弾きやすい。
音量も十分にありパワフルなサウンドにもファットなトーンのドライブサウンドを得ることができる。
SADOWSKY/SGN9 BLACK
ラウンド弦の芯線に緩みのない強靭な巻きを施すhex core(六角形芯線)を採用。
なめらかなフィンガリング感を持つワウンド弦と適度なテンションを持ち粒立ちの良いアタック・トーンを持つプレーン弦によるメリハリのあるサウンドが特徴。
六角形の芯線を持つワウンド弦はアコースティックな響きを持ちながら芯のしっかりとしたなり豊かでハリのある低域によってパワー感が加わっている。
プレーン弦のテンションはチョーキング時に若干の重さが加わる1、2弦のチョーキングはやや重め。
ともに張りの強さがあるためサステインはよく、アタックのしっかりとした鳴りと分離の良いサウンドはパワー感も十分ありオールラウンドなジャンルに対応可能。
ROTO SOUND/ROTO PINKS R9
イギリス製の弦メーカーで60年代よりベース弦が人気。
ギター弦でもこれまでジミ・ヘンドリックスやジェフ・ベックなど多くのトップギタリストらにも愛用される。
ニッケルプレートによるナチュラルでフックの良い指のタッチ感。食いつきの良いピックの当たりは安定した弾き心地がある。
アコースティックのような豊かな響きを持つワウンド弦からプレーン弦も抜けはとても良い、分離の良いclearなサウンドを持っている。
明るいサウンドでチョーキング、ビブラートなどスムーズに行うことができるバランスのとれたセット
EVERLY/B-52 ROCKERS
アロイ52合金をワウンド弦に使用していることから命名。
エヴァリー独自のスーパーハイテンション・ワインディング・テクニックによるサステインの良さなどがポイント。
アロイ52素材による寿命の長さレスポンス等を向上させているが響きの良い、低域、中域ときらびやかな高域など全体を通して鳴りは良く、レンジの広いトーンが出てくる。
タイトでクリアなワウンド弦のトーン、しっかりとしたアタック感を持つ抜けの良いプレーン弦からの明るくキレの良いトーンなどキャラクター的には締まりのあるソリッドなサウンド明るくサステインの良い高域などブライトなトーンを持っている。
最後に
20年以上前のある雑誌インタビューでは、アメリカでは弦を生産している工場は2カ所で、あらゆる太さと、メーカーを変えて販売しているという記事を読んだ事があります。
各メーカーはそんなに変わりはないという事ですが、
現在のように材質、形状も変わっていると選択肢もかなり広がっている状況です。
また、ゲージの太さを変える場合、オクターブチューニングなどが狂ってしまうこともあるためナット、ブリッジ、ネックの調整を行いましょう。