
イントロダクション:伝説の初来日公演
1997年9月、エリック・ジョンソンが待望の初来日を果たしました。グラミー賞受賞曲「Cliffs of Dover(遥かなるドーバー)」で世界的名声を得た彼が、日本のファンの前で披露したサウンド。その音色を生み出した機材の全貌を、セッティング詳細とともに解説します。
公演メンバー構成:
- Eric Johnson:Guitar, Vocal
- Roscoe Beck:Bass
- Stephen Barber:Keyboard
- Tom Bretchlein:Drums
関連記事:ハードロックギタリスト使用機材データベースでは、エリック・ジョンソンを含む名手たちの機材情報を年代別に収録しています。
使用ギター:3本のこだわり抜いた選択
メインギター:1957-58年製 Fender Stratocaster
| 項目 | 詳細仕様 |
|---|---|
| 製造年 | 1957-58年製(40年物ヴィンテージ) |
| ボディ材 | アルダー |
| カラー | 2トーンサンバースト |
| ネック | メイプル、Vグリップ |
| フレット | 太めのフレットに交換済み |
| ピックアップ | オリジナル(交換なし) |
| コンディション | 極めて良好(ネジ類にサビなし) |
トレモロセッティングの特徴
固定式セッティングの詳細:
- アームをボディエンド側に固定
- トレモロスプリング:5本フル装着
- アンカー:強く締め込み
- 結果:非常に高いテンション
この仕様の音響的メリット:
- サステインの向上:ブリッジの固定により音の伸びが改善
- チューニング安定性:弦振動のロスを最小化
- アタック感の強化:弦の張力が高く、ピッキングのレスポンス向上
- 倍音の増加:固定されたブリッジが豊かな倍音を生成
ヴィンテージギターのメンテナンス状態
40年近く経過したギターとは思えない良好なコンディション。細かな傷はあるものの、適切な管理がなされていたことが確認できます。
保存状態から学ぶポイント:
- ネジ類のサビ防止(定期的な接点クリーナー使用)
- 温湿度管理の徹底
- 演奏後の弦緩めは不要(高テンション維持)
サブギター:1957年リイシューモデル Fender Stratocaster
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| モデル | ’57 Reissue |
| ネック | メイプル、Vグリップ |
| セッティング | メインギターと同様の固定式 |
| 用途 | メインギターのバックアップ |
リイシューモデルを選んだ理由: ツアーでのトラブルリスクを最小化するため、ヴィンテージオリジナルに近い音質のリイシューをバックアップとして使用。
レスポール:1989年製 Gibson Les Paul Standard Reissue
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 製造年 | 1989年製リイシュー |
| カラー | チェリーサンバースト |
| 改造箇所 | フロントピックアップのみGibson ’57 Classicに交換 |
| リアピックアップ | ストック(無改造) |
ピックアップ交換の理由: フロントのみ’57 Classicに交換することで、よりヴィンテージライクなウォームトーンを実現。リアはストックのまま、モダンなハイゲインサウンドを維持。
アメリカ国内ツアーとの違い: 米国内ではヴィンテージのレスポールを使用していましたが、海外ツアーではトラブル防止のためリイシューモデルを選択。プロフェッショナルなリスク管理の一例です。

Jim Dunlop (ジム ダンロップ) 47PEJ3 Eric Johnson JazzIII 6枚入り プレイヤーズパック

FENDER フェンダー Artistシリーズ Eric Johnson Stratocaster RW Lucerne Aqua Firemist
アンプセッティング:3台の役割分担
クリーンサウンド:Fender Deluxe Reverb(2台ステレオ)
基本セッティング:
| パラメーター | 設定値 | 効果 |
|---|---|---|
| VIBRATO | 1 | 最小限のモジュレーション |
| VOLUME | 3 | クリーンヘッドルーム確保 |
| TREBLE | 4.5 | バランスの良い高域 |
| BASS | 6.5 | やや強調された低域 |
| REVERB | 6 | 豊かなアンビエンス |
| SPEED | 1 | ヴィブラート速度最小 |
| INTENSITY | 1 | ヴィブラート深さ最小 |
2台ステレオ使用の効果:
- 音の広がり:左右に配置することで空間的な広がりを実現
- 音圧の向上:単純に2倍のスピーカーで厚みのあるサウンド
- リスク分散:1台が故障してもライブ続行可能
Deluxe Reverbの音響特性:
- 真空管:6V6パワー管によるウォームなトーン
- スピーカー:12インチJensen(または同等品)
- ワット数:22W(クリーンヘッドルームが広い)
リズムプレイ:Marshall JMP 50W
用途:
- バッキングリフ
- リズムギターパート
- 中程度の歪みが必要な楽曲
推定セッティング:
- Presence: 6-7
- Bass: 5-6
- Middle: 4-5
- Treble: 7-8
- Volume: 6以上
リードプレイ:Marshall JMP 50W
用途:
- ギターソロ
- 高ゲインパート
- サステインが必要なフレーズ
リズムとの差別化: ゲイン量とミッドレンジのブーストにより、ソロ時の音抜けを確保。

Fender エレキギター Stories Collection Eric Johnson 1954 “Virginia” Stratocaster®, Maple Fingerboard, 2-Color Sunburst

FENDER USA/Eric Johnson Stratocaster Thinline 2CS
エフェクター繋ぎ方:3系統の信号経路
システムA:クリーンサウンド系統
信号の流れ:
Fender Stratocaster
↓
Maestro Echoplex(テープエコー)
↓
TC Electronic Chorus/Flanger
↓
Fender Deluxe Reverb(2台ステレオ)
各エフェクターの役割:
| 機材名 | 効果 | セッティングポイント |
|---|---|---|
| Maestro Echoplex | ヴィンテージテープエコー | リピート:3-4回、ディレイタイム:300-400ms |
| TC Electronic Chorus/Flanger | モジュレーション | コーラス深さ:中程度、スピード:遅め |
音作りの哲学: クリーントーンでは、ギター本来の音色を活かしつつ、空間系エフェクトで立体感を付加。
システムB:リズムプレイ系統
基本構成:
Fender Stratocaster
↓
Jim Dunlop Fuzz Face
↓
Marshall JMP 50W(リズム用)
特殊セッティング(曲によって):
Marshall JMP 50W(リズム用)
↓
マイクで音を拾う
↓
MXR Digital Time Delay
↓
Ernie Ball Volume Pedal
↓
Whirlwind A/Bスイッチ(クリーン/ウエット切り替え)
↓
ミキサー
この複雑な接続の意図: リズムギターの音にディレイをかけ、ボリュームペダルで音量をコントロールしながら、クリーンとエフェクト音を瞬時に切り替え。非常に手の込んだセッティングです。
Fuzz Faceの特徴:
- ゲルマニウムトランジスタによる温かい歪み
- ギターのボリュームノブに敏感に反応
- ダイナミクスレンジが広い
システムC:リードプレイ系統
信号の流れ:
Fender Stratocaster
↓
Whirlwind Selector(リズム/リード切り替え)
↓
Jen Cry Baby Wah
↓
Tube Works Tube Driver
↓
Marshall JMP 50W(リード用)
各エフェクターの役割:
| 機材名 | 効果 | 使用場面 |
|---|---|---|
| Whirlwind Selector | A/Bスイッチ | リズム/リード瞬時切り替え |
| Jen Cry Baby | ワウペダル | 表現力豊かなソロ |
| Tube Works Tube Driver | 真空管オーバードライブ | Marshallの歪みをブースト |
Tube Driverの重要性: 真空管を使用したオーバードライブで、Marshallアンプの歪みをさらにブースト。単なるブースターではなく、独自の音色を付加します。

FENDER USA/Eric Johnson Stratocaster Thinline 2CS
スライドバー:こだわりのガラス製
エフェクトボード端に配置:
- 厚み違い:3種類
- 形状違い:3種類
- 長さ違い:3種類
ガラス製を選ぶ理由:
- 音色の柔らかさ:金属製より温かいトーン
- サステインの自然さ:過度な倍音が発生しない
- タッチの繊細さ:ガラスの滑らかさが微妙なニュアンスを可能に
使い分けの基準:
- 厚いスライド:音量大、サステイン長い曲
- 薄いスライド:繊細なフレーズ、速いパッセージ
- 長いスライド:複数弦をカバーするコード的奏法
ピックアップ高さ調整:エリック流セッティング
ストラトキャスターのピックアップ高さ
推奨設定値(弦を最終フレットで押さえた状態で測定):
| ピックアップ | ベース側(E弦) | トレブル側(e弦) |
|---|---|---|
| ネック | 2.4mm | 2.0mm |
| ミドル | 2.0mm | 1.6mm |
| ブリッジ | 1.6mm | 1.2mm |
エリック・ジョンソンの特徴: 一般的なセッティングよりやや低め。これにより、クリアで明瞭なトーンを実現。高すぎるピックアップは弦との磁力干渉でサステインが減少します。
レスポールのピックアップ高さ
| ピックアップ | ベース側(E弦) | トレブル側(e弦) |
|---|---|---|
| ネック | 2.0mm | 1.6mm |
| ブリッジ | 1.6mm | 1.2mm |
’57 Classic交換の効果: フロントピックアップをヴィンテージ仕様に変更することで、中域の豊かさとウォームなトーンを獲得。
セッティング実践ガイド
エリック・ジョンソントーン再現の手順
ステップ1:ギターの基本調整
- 弦高設定:12フレット上で1.6-2.0mm(やや低め)
- ピックアップ高さ:上記の推奨値を参考に調整
- 弦ゲージ:.010-.046(レギュラーライトゲージ)
- トレモロ固定:スプリング5本、アームを固定
ステップ2:アンプセッティング
Fender系アンプの場合:
- Volume: 3-4(クリーンを保つ)
- Treble: 4-5
- Bass: 6-7(やや強調)
- Reverb: 5-6(豊かに)
Marshall系アンプの場合:
- Presence: 6-7
- Bass: 5-6
- Middle: 4-5
- Treble: 7-8
- Volume: 6以上(真空管を駆動)
ステップ3:エフェクター選択
予算別推奨機材:
エントリーレベル(〜5万円):
- コーラス:BOSS CH-1
- ディレイ:BOSS DD-8
- ファズ:Electro-Harmonix Big Muff Pi
- ワウ:Jim Dunlop Cry Baby GCB95
中級レベル(5〜15万円):
- コーラス:TC Electronic Corona Chorus
- ディレイ:Strymon El Capistan(テープエコー再現)
- ファズ:Dunlop Fuzz Face Mini
- オーバードライブ:Tube Works Real Tube
上級レベル(15万円〜):
- コーラス:TC Electronic SCF(ヴィンテージ)
- ディレイ:Maestro Echoplex EP-3(オリジナル)
- ファズ:Dallas Arbiter Fuzz Face(ヴィンテージ)
- オーバードライブ:Tube Works Tube Driver(オリジナル)
エフェクター繋ぎ方の最適化
クリーン系エフェクトチェーン
推奨接続順序:
- ギター → バッファー(BOSS TU-3など)
- バッファー → コーラス/フランジャー
- コーラス → ディレイ/エコー
- ディレイ → アンプ
注意点:
- 長いケーブルを使う場合、最初にバッファーを入れる
- モジュレーション系は歪みより後ろ
- リバーブはアンプ内蔵を活用
歪み系エフェクトチェーン
推奨接続順序:
- ギター → ワウペダル
- ワウ → ファズ/オーバードライブ
- ファズ → アンプ
重要ポイント:
- ワウは歪みより前
- ファズはバッファーを嫌う(直接ギターに接続が理想)
- Tube Driverのような真空管系は最終段

よくある質問(FAQ)
Q: エリック・ジョンソンのようなクリーントーンを出すには? A: ギター本体の音質が最重要です。ピックアップ高さを低めに設定し、弦高も低めにすることで、クリアで明瞭なトーンが得られます。アンプは真空管式のFender系が最適です。
Q: トレモロを固定すると音はどう変わりますか? A: サステインが向上し、チューニング安定性が増します。ただし、アームアップができなくなるため、奏法に制限が出ます。
Q: Maestro Echoplexは高価ですが、代替品は? A: Strymon El CapistanやFree The Tone Future Factoryが、テープエコーの音を忠実に再現しています。
Q: なぜ3台のアンプを使い分けるのですか? A: クリーン、リズム、リードで音色を明確に分離し、素早い切り替えと音質の一貫性を実現するためです。
Q: ガラス製スライドバーはどこで購入できますか? A: Dunlop、Ernie Ball、Coricidin(ヴィンテージ)などが有名です。厚みと長さを試して、自分に合ったものを選びましょう。
まとめ:エリック・ジョンソンサウンドの本質
エリック・ジョンソンの1997年初来日公演機材から学べること:
- ヴィンテージギターの価値:適切にメンテナンスされた40年物の音
- トレモロ固定の効果:サステインとチューニング安定性の向上
- 3系統の明確な分離:クリーン、リズム、リードの使い分け
- 空間系エフェクトの重要性:テープエコーとコーラスによる立体感
- ピックアップ高さの最適化:クリアなトーンのための低めの設定
機材は高価ですが、セッティングの考え方は誰でも応用可能です。「クリアな音」「空間的な広がり」「ダイナミクスの確保」という3つの原則を守れば、エリック・ジョンソンのエッセンスは再現できます。
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筆者プロフィール: 90年代にライブハウスツアーを経験。エリック・ジョンソンの来日公演も観覧し、機材研究を30年以上継続。ヴィンテージギターとアンプのメンテナンスにも精通しています。
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