ギターのネックにどんな素材が使われているかでサウンドにも影響してきますが、まずはギター演奏で1番多く触れているネックのグリップから見ていきましょう。
ネックの素材
ネックの素材として真っ先に思いつくのは「メイプル」ではないでしょうか。
「メイプル」は日本名は「楓(カエデ)」または「紅葉(モミジ)」です。そう、秋の風物詩、紅葉(こうよう)でもおなじみの木ですね。
「メイプル」は北米産が有名ですが、寒さの厳しい地域の物が適しているとされています。
ボディ材やレスポールのようにトップ材として使われることから、硬く、立ち上がりのいいサウンドが特徴です。ギブソンでも一時期ネック材としても使用されました。
他にはギブソンでお馴染みのマホガニー材、希少材のコリーナ材、数は少ないですが1968年頃発売された金属製のヴェレノ、アルミ素材のクレイマー、トラヴィス・ビーン、アプローズ、グラファイト製のネックなどもありました。
フレイムメイプルは何故、珍重される?
メイプルの中でも高級材として価格も高くなる傾向の杢ですが、「フレイムメイプル」は板目材としてギターのネックやボディ材に使われています。
また柾目(まさめ)材として「タイガーメイプル」がありますがバイオリンなどのより高級な楽器に使われることが多い木材です。
この柾目材は木目のより均一な部分を使用していることもあり、狂い(反り、割れ)にくいことから珍重されています。
見た目の美しさからギターでも高級モデルに使用され、高級車の内装、高級家具などでも見かけるのですが、音質に関しては直接的な影響はないと言われています。
ただし杢がでる材は、木の成長過程で木材組織が異常な成長をしたために現れる現象で、狂いが出やすい(反り、割れやすい)と敬遠されていましたが、きちんとシーズニングすることで厳選された高級品となっていきます。
その他にもキルテッド(玉杢)、ハードメイプル材によく出るバーズアイ(鳥眼杢)なども高級材となっています。
ネックのグリップ
ネックは演奏時、常に触れている部分ですからグリップに関しても、こだわってみたいところです。
ライブ中に弦が切れてしまい急遽ギターを借りることがあったのですが、非常に肌触りがよくネックの厚み、形状がとても気に入ったことがありました。
これ以降、ネックの裏側を削ってみたり塗装を剥がすなども試したことがあります。
塗装の種類と弾き心地
ネック本体の場合、ラッカー塗装、ポリ塗装が多いのですが、塗装が厚いとベタベタしたり汗などで滑りも悪くなります。
ラッカー塗装は経年と共に中の木材も乾燥が進みますが、塗装が厚いとそうはいきません。
ポリ塗装は塗膜で表面を覆ってしまう感じです。
以前、ポリ塗装ネックの塗膜を剥がし、ネックを削ってもらい、サーフェイサー(下地処理)をしてラッカー塗装をしたのですが時間と共にネックが反ってしまい何度も調整することになってしまいました。
これはクラフトマンによると、「シーズニングが上手くできてない材のポリ塗膜からラッカーに変えたことで乾燥が進んで反りが出てしまったのでは?」ということでした。
またネックの厚みを変えたことも影響しているかもしれません。
レリック加工が流行していますがシーズニングが出来ていないと同じ事が言えるかもしれません。
無塗装は肌触りは良いのですが、汗など水分の影響があり、また見た目の黒ずみが気になります。薄めのラッカー塗装が私のお気に入りです。
指板の種類と形状
指板の代表的な素材はメイプルとローズウッド、エボニーがあります。
ローズウッドは茶褐色で比較的柔らかく、オイルフィニッシュされています。
そのため保湿には気を付けた方が良いでしょう。サウンドは暖かみのあるサウンドで低音域も豊かです。
メイプルは白っぽい木材でクリアで立ち上がりのいい、はっきりした音が特徴です。
汗などで黒ずんだり、経年と共にアメ色に変色します。
そのためメイプル指板はクリアーな塗料でコーティングされています。
エボニーは黒っぽい木材ですが硬く、ローズウッドに比べて高級感のある見た目から高級機種に使用されています。
サウンドはローズウッドとメイプルとの間のような特徴です。
また形状ですがVシェイプとUシェイプとに分かれます。
Vシェイプといえばフェンダーの1950年代初期のストラトキャスターが有名ですが、アコースティックギターのネックなどVシェイプのネックは意外と多く、ソフトVネックなどV型の頂点が緩やかなものVの頂点をずらしたデザインなど、中にはローポジションはUシェイプ、ハイポジションはVシェイプといった変わり種まであります。
フレットの高さと材質
フレットの高さはテクニカル志向が全盛の頃から、幅が広く背の高いものが多くなりました。
また逆にフレットレスワンダーといった平べったく背の低いフレットがありました。
ギブソン・レスポール・カスタムが有名ですが、1970年代に一度姿を消してしまいますが、もともとジャズを弾くために作られたそうです。
一般的にフレット素材はニッケルシルバーが多かったのですが、ステンレス素材のものが増えています。
利点としてはニッケルに比べて硬いため耐久性が高く、立ち上がりがよく、サステインにも優れているといった点が選ばれているようです。
フレットのメンテナンス
フレットは弾いていくうちにすり減っていきます。
すり減ってしまうと「すり合わせ」で修復が出来ます。
これはスチールウールで磨くのですが指板を傷つけないようにマスキングなどして注意しながら磨きます。これで治まらないようでしたらリペアショップで交換が必要です。
フレットの端が指に引っ掛かるようならヤスリで削ります。
フレットが浮いてきたようならプラスチックハンマーで軽く叩いていけば大概は治りますが、ネックに反り、ねじれなどの不具合が生じている可能性がありますのでリペアショップで点検してもらうことをお勧めします。
またメンテナンスですが、汗や皮脂、ほこりなどの汚れが溜まってしまうので演奏後はふき取るようにしましょう。
忘れがちなナット
ナットはチューニングに大きな影響を与えるため、また 削りすぎるとやり直しが効きませんので 調整は専門のリペアマンに任せる方が賢明です。
またナットの溝切が不十分だと弦が切れやすくなる不具合も起こります。
材質はプラスチック、牛骨、サステインが良い、ブライトになるということからブラス製のナットも多くありました。
イングヴェイ・マルムスティーン・モデルにも使われていました。
現在ではグラファイト製や高分子素材など新しいものが出来ているようです。
また高性能のものでいえばベアリングを組み込んだローラーナットがあります。
ジェフ・ベック・モデルで有名です。
トラスロッド調整、 ネックの反りのチェック
ネックには弦の張力に耐えるように、金属製のトラスロッドと呼ばれている補強材が埋め込まれています。
反ってしまうと調整が必要になりますが、ギターのヘッド側が持ち上がるような反り方は「順反り」、ヘッド側がのけ反るように沈んでいると「逆反り」となります。
反りのチェックはボディ側からナット側方向へ6弦側と1弦側をそれぞれ見るのですが、先程の「持ち上がっている」のか「のけ反って」いるかもしくは複雑に「ねじれている」かを判断します。
必ずギターの弦を張ってチューニングした状態でチェックしてください。
弦を張ってないと逆反り気味になっていて、チューニングをした状態でまっすぐになるように調整されているのがベストです。
よって、弦のテンションを変えた、弦の太さを変えたなどの変更があるときにはチェックしましょう。
反りが発生していたらトラスロッドを回して調整するのですが、ある程度馴れが必要で軽度なもののみ調整しましょう。
ネックが「ねじれ」たり、「波打っている」ようならば専門的な知識が必要になりますので、あえてトラスロッドは触らず(ひどくなる場合があります)リペアショップへ持っていき相談しましょう。
トラスロッド調整は「順反り」の場合は右まわしに締めていけばいいのですが、まわし過ぎに注意しながら少しずつ様子をみながら進めましょう。
「逆反り」ならばトラスロッドを左まわしに緩めていくのですが、チューニングした状態で逆反りの場合は酷くなる前にリペアショップで診てもらう方がいいでしょう。
トラスロッドはネックのエンド側かヘッド側にありますが、モデルによってはカバーが付けられていたり、ピックガードやネックを外して調整するものまで様々です。
なぜネックは反るのか
これは様々な要因が考えられますが、一つ目は保管方法です。
ギタースタンドに立てて保管することが多いかと思いますが、ヘッド側を引っ掛けて「ぶら下げた状態」は問題ないのですが、「置く」タイプのスタンドはネックになるべく負担のかからないように、「寝かせ気味」ではなく「立たせ気味」にしましょう。
またスタンドを使わないならハードケースの使用が望ましいのですが、転倒の危険とネックにストレスを掛けないためにも壁に立てかけるのは避けた方がいいです。
二つ目は弦の太さを変えた、もしくはテンションを変えた、ネックの仕込み角度を変えた場合も影響することがあります。
ナット調整、オクターブチューニングも合わせてセッティングすることをお勧めします。
三つめは環境によるものが考えられます。
大きな楽器店では高級ギターはガラスケース内や別室で湿度管理された状態で直射日光も避けられています。こういった事に注意できればベストですが・・・
また、シーズニング(乾燥具合)が上手くいってないもの・・・初心者向けのモデルなどは調整の頻度が高くなるものを多く見てきました。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
初心者の方などは読んでいくうちに「ギターのネックがデリケート」だと感じる方も多いのではないでしょうか?
そのくらい大事な部分ではあるのですが、すべてのギターがここまで手がかかるわけではないのですが、ギターを何本も所有するうちに何本かは問題を抱えた個体に当たることがあります。
それが1本目のギターなのか2本目のなのかは分かりませんが、深刻な状態になる前にセルフメンテナンスを心掛けていきましょう。