この記事でわかること
- ザック・ワイルドは1987年のオジー加入から2025年の逝去まで「片腕ギタリスト」として活動し、現在もBlack Label SocietyとWylde Audioブランドで精力的に活動中
- 2026年3月27日にBLS新作「Engines of Demolition」をリリース。収録曲「Ozzy’s Song」はオジー逝去後に書き上げた最大の追悼曲
- 自身のギターブランド「Wylde Audio」は2015年設立。Odin・Barbarian・Blood Eagleなど複数ラインを展開し、国内でもデジマート等で入手可能
1988年、初めて「No Rest for the Wicked」を聴いたとき、ランディ・ローズでもジェイク・E・リーでもない、全く新しい個性を持ったギタリストが登場したと感じました。 両足を踏ん張り、重心を低く落として髪を振り乱しながらレスポールを鳴らす姿。あの粒の揃った重低音の中に、さりげなくカントリーのフレーズが混ざり込んでいる。あの瞬間、確かに「次の時代のギタリスト」が来たと思いました。
それから30年以上、ザック・ワイルドはオジー・オズボーンの「片腕」であり続けました。 そして2025年7月22日、オジーは心臓発作でこの世を去りました。
それでもザックは止まりませんでした。 オジーへの追悼曲「Ozzy’s Song」を収めた新アルバムを2026年3月にリリースし、自身のギターブランドWylde Audioをさらに発展させながら、ステージを走り続けています。
この記事では、90年代バンドシーンを生きた元バンドマンの目線で、ザックの軌跡・使用機材・そして今を丁寧にお伝えします。
1. ザック・ワイルドとは|経歴と90年代の存在感
プロフィール基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本名 | Jeffrey Phillip Wielandt |
| 生年月日 | 1967年1月14日 |
| 出身 | ニュージャージー州ベイヨン |
| ジャンル | ハードロック、ヘヴィメタル、ブルースロック |
| 代表バンド | Black Label Society(1998年〜) |
| オジーオズボーン バンド在籍期間 | 1987〜1992年、1995〜2005年、2007年〜2025年 |
1987年、20歳のザックはオジー・オズボーンにデモテープを送り込みます。 そのテープが評価されギタリストの座を掴んだ翌1988年、デビュー作「No Rest for the Wicked」でその名を世界に知らしめました。
90年代はオジーとともに「No More Tears」(1991年)、「Ozzmosis」(1995年)という名盤を生み出し、ロック史に残るギタリストとして確固たる地位を築いていきました。 当時のギター少年たちにとってザックは、テクニックだけでなくその「姿勢」からも何かを学べるギタリストでした。
2. 初期の使用機材|「標的」レスポールと90年代サウンドの秘密
メインギター①「標的」レスポール・カスタム(1980年製)

デビュー作「No Rest for the Wicked」でも使用された、ザックのシンボルともいえるギターです。 元の持ち主はリー・ジャクソンの元で働いていた人物で、ザックはそれまで所有していたブラックのレスポール・カスタムとホワイトのダブルネックの2本と交換して手に入れたとのことです。
ランディ・ローズのギターと色が被ることを避けるため、塗装はあの「ブルズアイ(標的)」模様に変更されました。音色への影響を最小限にするため塗装量も極力抑えられています。 ピックアップはEMG。アクティブピックアップ特有の音の粒立ちと、レスポールの重低音の組み合わせは、当時のギターキッズには相当な衝撃でした。
なお、2026年の新作「Ozzy’s Song」のギターソロには、このグレイルを再び持ち出したと本人が語っています。「最初のオジーとの曲もこのギターで書いた。だから最後のトリビュートも、これで弾くのが自然だった」という言葉に、30年以上の絆がにじんでいます。
メインギター②「ガラスの破片ペイント」レスポール・スタンダード(1982年製)
タバコ・サンバーストカラーの82年製スタンダード。同じEMGを搭載し「標的」と同じサウンドを目指しましたが、音が揃わず出番は少なくなったと伝えられています。 後に練習用として使われていたようで、スタジオか実家に置かれていたという記録が残っています。
その他のギターコレクション(デビュー期)
- 77年製ナチュラル・フィニッシュのレスポール・スタンダード(後に赤い標的模様に塗装)
- レスポール・ゴールドトップ
- 83年製スタンダード・リイシュー
- 85年製スタンダード バーガンディレッド
- コリーナウッドのフライングV(58年型の80年頃の再生産品)
ザックが愛したレスポールの魅力は、90年代のロックシーンを支えたギターたちに共通するものがあります。「標的」のようなヴィンテージ・レスポールは今なお中古市場で高い人気を誇っていますが、当時のギターキッズが手に入れられる価格帯には、同じ時代を彩ったさまざまな名機が存在していました。
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使用弦:GHS TNTストリングス
低音弦側にニッケルメッキスチールをタイトに巻いた「TNT(Thin-Thick)」と呼ばれる特殊ゲージです。高音弦はライト、低音弦はヘヴィという組み合わせで、6弦は.052というやや太めのセッティング。あのしっかりとした音の芯と低音弦の迫力は、このゲージに秘密がありそうです。
アンプとエフェクター(初期)
| 機材 | 詳細 |
|---|---|
| アンプ | リー・ジャクソンが手を加えた100Wマーシャル |
| プリアンプ | リー・ジャクソン製「メタルトロニクス」(当時約28万円) |
| エフェクター | Wahペダルを好んで使用 |
「メタルトロニクス」はレーサーX時代のポール・ギルバートや高崎晃、聖飢魔IIのルーク篁なども愛用していた機材です。当時のハードロックシーンを象徴する名プリアンプのひとつといえるでしょう。
ザック本人はピックアップを含めた機材への関心は薄く、セッティングはリー・ジャクソンに任せていたとのエピソードも残っています。「いい音が出ればそれでいい」というスタンスが、彼の演奏家としての本質を表しているようにも感じます。
リー・ジャクソンの「メタルトロニクス」のようなプリアンプは、90年代ハードロックのサウンドを特徴づけた機材のひとつです。あの時代にしか存在しなかった独特の歪みキャラクターは、現代の機材ではなかなか再現できないものも多くあります。
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ザックがリー・ジャクソンに改造を依頼した100Wマーシャルは、当時のハードロックシーンの「標準」でもありました。マーシャルを中心としたハイゲイン・アンプの世界は、90年代に大きく広がっていきます。
3. Wylde Audioとは|ザックが自ら立ち上げたギターブランド
2015年に設立された「Wylde Audio」は、ザック・ワイルドが自らプロデュースするギターブランドです。エディ・ヴァン・ヘイレンのEVHブランドに近いスタイルで、ザックのサウンドとビジョンを直接カタチにすることを目的に設立されました。
主要モデル一覧と価格帯(2026年現在)
| モデル名 | ボディシェイプ | ピックアップ | 米国定価目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| Odin / Odin Grail | レスポール系 | EMG 81/85 | $1,399〜$1,799 | ブルズアイグラフィック。最もザックらしいモデル |
| Barbarian | SG/レスポール系 | EMG 81/85 | $1,399〜$1,599 | フレイムメイプルトップが美しいスタンダード機 |
| Blood Eagle | オリジナル形状 | EMG 81/85 | $1,399〜 | ベベルエッジが特徴的なモダンシェイプ |
| Warhammer | SGV系(独自形状) | EMG 81/85 | $1,799〜 | ギブソン/SGとフライングVを融合させたようなシェイプ |
| Nomad | レスポール系 | EMG 81/85 | $999〜 | ツアー向けのスタンダードモデル |
共通スペックの傾向 マホガニーボディ、3ピースメイプルネック、エボニー指板、ジャンボ22フレット、EMG ZW(ザック・ワイルド)シグネチャーピックアップが標準構成です。スケールは24.625インチで、ギブソンと同じ規格に近い感触で弾けます。
国内での入手方法と中古相場
| 入手経路 | 価格目安 | 備考 |
|---|---|---|
| デジマート(新品) | 200,000〜300,000円前後 | モデル・為替により変動あり |
| デジマート(中古) | 100,000〜180,000円前後 | 流通量はやや少なめ |
| 楽天・イシバシ楽器等 | 200,000円前後〜 | 国内正規取扱店で購入可 |
| eBay・個人輸入 | $900〜$1,400相当 | 関税・送料で+数万円 |
国内流通は限られていますが、デジマートで「Wylde Audio」と検索すると複数店舗からの在庫が確認できます。中古での入手を考える場合、コンディションによって価格差が大きいため、購入前に現物確認か店舗への問い合わせをおすすめします。
Wylde AudioがEVHブランドに近いスタイルで立ち上げられたように、90年代を代表するギタリストたちは自らのサウンドをギターやブランドというカタチで後世に残そうとしています。エディ・ヴァン・ヘイレンが1990年代にどのようなセッティングでその伝説的なサウンドを作り上げていたか、ご興味のある方はこちらの記事もあわせてご覧ください。
90年代のハードロック・ヘヴィメタルシーンには、ザック・ワイルド以外にも強烈な個性を持ったギタリストたちが活躍していました。同じ時代に活躍していたイングヴェイ・マルムスティーンの機材については、以下の記事でまとめています。
Wylde AudioはGibsonシグネチャーとどう違うのか
| 比較項目 | Wylde Audio | Gibson ZWシグネチャー |
|---|---|---|
| 設計の自由度 | ザック本人が全仕様を決定 | Gibsonの製造基準に準拠 |
| ボディシェイプ | オリジナル形状も展開 | レスポールベース |
| 価格帯(国内) | 20〜30万円台 | 30〜50万円台以上 |
| ピックアップ | EMG ZWシリーズ標準搭載 | EMG搭載モデルあり |
| 入手しやすさ | 国内流通はやや少ない | 国内楽器店で比較的見つかる |
「ザックの音にどこまで近づきたいか」「予算はどのくらいか」によって選択肢が変わってきます。本人の哲学が最も濃く反映されているのはWylde Audioですが、Gibsonシグネチャーは国内での入手や修理が格段に容易です。
4. 現在のザック・ワイルド|オジー逝去後の活動と新作情報
オジー・オズボーン逝去と「Ozzy’s Song」
2025年7月5日、バーミンガムで行われた「Back to the Beginning」コンサートがオジーの最後のステージとなりました。 その17日後、2025年7月22日、オジー・オズボーンは心臓発作により75歳でこの世を去りました。
訃報を受けたのはザックがPanteraのツアー中のことで、ジャック・オズボーンから電話で知らされたと伝えられています。 「キース・リチャーズ、レミー、オジー……あの人たちは空気みたいなもので、ずっとそこにいるものだと思っていた」。そうザックは語っています。
新アルバム「Engines of Demolition」のラストトラック「Ozzy’s Song」は、オジーの葬儀を終えた直後にザックが書き上げた曲です。 ギターソロには、デビュー時に使っていた「グレイル(標的レスポール)」を再び持ち出しました。「最初のオジーとの曲もこのギターで書いた。だから最後のトリビュートも、これで弾くのが自然だった」という言葉に、30年以上の絆がにじんでいます。
Black Label Society 新作「Engines of Demolition」
| 情報 | 詳細 |
|---|---|
| タイトル | Engines of Demolition |
| リリース日 | 2026年3月27日 |
| レーベル | MNRK Heavy |
| 収録曲数 | 15曲 |
| 注目曲 | 「Ozzy’s Song」(ラストトラック・オジーへの追悼曲) |
| 先行シングル | “Name In Blood” / “The Gallows” / “Broken And Blind” / “Lord Humungus” |
Zakk Sabbathプロジェクトについて
ザックはBlack Label Societyと並行して「Zakk Sabbath」というプロジェクトも展開しています。BLSメンバーとともにブラック・サバスの楽曲を演奏するもので、オジー逝去後も活動が続いています。 オジーとの縁の深いブラック・サバスの楽曲を現役のトップミュージシャンが演奏するという姿は、ファンにとって感慨深いものがあるのではないでしょうか。
5. こんな方におすすめです
- 90年代のオジー・オズボーン・バンドを聴いてギターを始めた「元ギターキッズ」
- ザックの骨太なレスポール・サウンドを今から再現したい方
- Wylde Audioを検討中だが国内での評判・入手方法が気になる方
- Black Label Societyの最新動向を追いたいファン
6. よくある質問(FAQ)
Q1. ザック・ワイルドのサウンドを再現するには何が必要ですか? A. まずレスポール系のボディにEMGのアクティブハムバッカーを搭載したギターが基本となります。アンプはマーシャル系のハイゲイン仕様が定番で、現行品であればJCM800や現代的なモデリングアンプでも十分近づけることができます。
Q2. Wylde Audioは日本で購入できますか? A. はい、デジマートや一部の大手楽器店(イシバシ楽器等)で取り扱いがあります。ただし流通量は多くないため、モデルによっては取り寄せや個人輸入が現実的な場合もあります。
Q3. ギブソンのザック・ワイルドシグネチャーとWylde Audioはどちらがおすすめですか? A. 予算・入手性・アフターサービスを重視するならGibsonシグネチャー、本人のビジョンにより近いギターを求めるならWylde Audioという選び方になるかと思います。価格帯はWylde Audioのほうがやや手頃です。
Q4. GHSのTNTストリングスは現在も手に入りますか? A. GHSは現在もZakk Wylde弦を製造・販売しています。Amazonや国内の楽器通販サイトで比較的入手しやすい弦です。
Q5. Zakk Sabbathはブラック・サバスとの公式なつながりがありますか? A. 公認の範囲内での活動とされています。オジー逝去後も活動が続いており、BLSメンバーとともにブラック・サバスの楽曲を演奏するプロジェクトです。
Q6. 「Engines of Demolition」の日本盤・日本語情報はありますか? A. 2026年3月時点では国内向け公式情報は限られていますが、MNRK Heavyの国際展開により主要ストリーミングサービスで視聴可能です。国内盤リリースについては各音楽ニュースサイトの最新情報をご確認ください。
Q7. ザック・ワイルドはオジーのソロ作品全作に参加していましたか? A. 2020年の「Ordinary Man」には参加していません。それ以外のオジーのソロアルバムにはほぼ全作参加しており、「No More Tears」「Ozzmosis」「Black Rain」など多数の名作に貢献しています。
Q8. レスポールにEMGのアクティブピックアップを載せるのは難しいですか? A. EMGはインストールがしやすい設計になっており、楽器店に依頼すれば比較的リーズナブルに取り付けてもらえます。アクティブ用の9V電池スペースの確保が必要になる点は、事前に確認されることをおすすめします。
7. まとめ
ザック・ワイルドという人物は、テクニックの派手さよりも「グルーヴ」と「音の重さ」で語られるべきギタリストだと、今でも思っています。 カントリーのフレーズをハードロックの文脈に自然に混ぜ込んでくる感覚、あの重心の低い佇まい。90年代のライブハウスでコピーしながら、そういうことを学んでいた気がします。
オジーとの別れを経て、それでもザックが前を向いて音楽を続けている姿は、同世代のバンドマンとして素直に励まされます。 「Ozzy’s Song」を聴きながら、あの頃夢中になっていた自分を、少し思い出してもらえたら嬉しいです。





